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第6回 ソニー生命賞

 ソニー生命賞 
 『クオリティオブライフ~人生の質を高く』  

大峡 美奈子さん(東京都)

私の母は三十二歳の時に癌で亡くなりました。その時私は十一歳、小学校五年生でした。そしてそれ以来、私自身も、何故か自分も母の年齢までしか生きられないような、そんな気がずっとしていました。そんな私が今、四十六歳となり、母が亡くなった歳とほぼ同じ歳の時に出産をした息子が、今年十四歳になります。 

母の死後、私は祖父母に育てられました。祖母は亡くなった母の母、祖父はその再婚相手でした。血の繋がらない祖父はとても厳しく、一緒に暮らしている時には、まともに話をした覚えがありません。その祖父も今年八十四歳。耳は遠くなり、違う意味で私の話す言葉のほとんどを聞く事が出来なくなりました。

癌は怖い。幼い心に芽生えたその思いは、一生消える事はありません。母は悪性リンパ腫と言う癌を発症してから、およそ六か月と言う短い期間で、亡くなってしまいました。癌細胞は血液を通して全身に廻り、母は半年の間に、子宮、脾臓を摘出する手術を受け、それでも完治に至らず亡くなりました。母子家庭だった私と弟は、姉弟だけとなり、その結果、祖父母に引き取られる事となったのです。私達は、亡くなった母が大好きでした。夜、母が働きに出て行くと、寂しくて、その日着ていた母の服を抱いて眠りました。 

そんな母の命を奪った癌を、私はずっと長い間何もせず、ただ恐れて毎日を生きて来てしまっていました。そして自分が三十三歳になった年、結婚、出産を経験し、気付くと母が亡くなった歳をひとつ越えていました。その時にふと、人間ドックを受けに行ってみようと思い立ち、すぐに行く事を決めました。心のどこかで、もしかしたら自分自身も子供を残し、若くして死ぬかもしれない。そんな諦めにも似た気持ちから、いや、もしもそうであっても何としても生きたい、夫の為子供の為に長生きしたいと、心から思うようになったのです。初めは、結果を知ってしまうのがとても怖かったです。これでもしも癌がみつかってしまったらどうしよう。やっぱり怖くて、健診を受けてしまった事を、後悔してしまう程でした。

 でも実際に検査を受けてみると、色々な身体の中の変化がきちんと数値として目に見える形で、理解できると言う事がよく分かりました。

 そして何より良い事は、その数値に対して一番適切な方法で早めに、深刻な状況に陥る前に、対処する事ができると言う事です。それから毎年夫婦で人間ドックを受け、私は四十歳の時、血圧が高くなって来ている事を知り、四十五歳で受けた脳ドックで、初期の脳梗塞を起こしている事が分かりました。どちらも、全く自覚症状はありませんでした。そして去年受けた健診で、子宮に前癌状態の細胞がある事が分かりました。今は血液の流れを良くする薬を飲みながら、子宮癌の経過観察をしている状態です。

 これがもしも人間ドックを受けていなかったら・・・。私はある日突然、進行した状態の子宮がんが見つかるか、またはある日突然、脳梗塞を起こし、半身麻痺となっていたかもしれません。怖い病気は、癌だけではなかったのです。

私の夫は中学高校の同級生で同じ十一月生まれの為、私達は誕生日の月に毎年同じ健診センターへ一緒に検査を受けに行っています。結果表には、前年の数値も一緒に記載されている為、その変化が目に見えてよく分かります。

私は今、人間ドックを毎年受ける事で病気になる前に、QOL(クオリティオブライフ)を高く人生を過ごしています。決して生い立ちは幸せだとは言えませんでしたが、そのおかげで、自分が病気になる事に対し、真剣に向き合える事ができました。そしてそれも全て、結果的には亡くなった母のおかげだと思い感謝しています。私にはまだ、妻として母として、そして育ててくれた祖父の孫として、やるべき事がたくさん残されています。

 これからも今まで通り健診を受けて、前向きに元気に、自分の人生を全うして行きたいと考えております。