ホーム>受けてよかった人間ドック ~人間ドック体験記~>第5回 優秀作品賞

第5回 優秀作品賞

 優秀作品賞 『人間ドックを受けて本当によかった

  増田 隆宏さん(東京都)

「胃癌の疑いあり」人間ドックの健診結果には残酷にもそう記されていました。

今から数年前、当時私はこれといった大きな病気にかかったこともなく、健康だけが取り柄の35歳。人間ドックはもう少し高齢の方が受けるものだと思っていましたが、周囲の勧めもあり「まぁ受けてみるか」と割と軽い気持ちだったと記憶しています。ちょうど少し肥満気味でしたので、肥満度(BMI)と悪玉コレステロールを検査までに改善しようと緊急ダイエットを画策していました。

そして検査当日、特段待ち時間もなくスムーズに進み、残すはバリウム検査のみ。苦しかったダイエットも今日で終わりだ、と心の中でつぶやきながら待合室で待機。私の前に検査していた方が順調に終わり、いよいよ私の番です。バリウムは生涯初でしたので、飲むときに少し緊張しましたが、担当医師のやさしい説明でスムーズに検査を開始することができました。医師はひたすらモニターをみながら何やらぶつぶつ言っていましたが、その内容は聞こえません。当たり前かもしれませんが、バリウムを飲むときには優しく微笑んでくれた医師の顔が真剣そのものでモニターを凝視しています。しかも検査開始の数分後、別室から白衣を着た年配の医師が一人、また一人とモニターを覗きにきました。「いつになったら終わるの?」とアイコンタクトで訴えても全然伝わらず、私の前の人に比べて倍くらい時間がかかってやっと終了しました。この時点では結果は一切教えてくれませんでした。まさか検査結果が最悪なものになるとはまったく予想せず、その夜私は大好きな黒豚しゃぶしゃぶを食べていました。(恐ろしいほどに何も症状がでていなかったのです。)

そして数日後、検査結果が到着。さほど大きくない字で「胃癌の疑いあり。2次検査要」と記載されていました。ちょうど世間では王貞治さんが胃癌の緊急手術を受けて成功したニュースがあったときで、癌=他人事の整理をしていた私にはこの時点ではあまりインパクトがありませんでした。「僕はまだ35歳だし恐らくポリープだろうな、どこも痛いところもないし大げさな書き方だなぁ。」と思い、次の日程を決めて以降は、あまり考えないようにしていました。

ですが再検査当日の胃カメラ受診後、事態は大きく動きます。医師から「病理の結果はまだこれからですが、胃癌ではないですね。」と言われたとき、「やっぱり癌じゃなかった」と一瞬思いましたが医師のコメントはまだ続きます。「恐らく悪性リンパ腫です」と。初めて聞く病名だったので「どういう病気ですか?」と尋ねたところ、「癌と同じと考えていただいて結構です。紹介状を書きましたので早速入院の手続きに入ってください。」私の希望が粉砕された一瞬です。「このままにしておくとどうなるのですか?まったく症状がありませんけど。」と聞けば、「死にます。」と即答。

正直、ショックでした。恐らく顔面蒼白だったのでしょう、医師は優しく「でも初期段階ですから恐らく助かりますよ、今気づいたことはあなたにとって幸運なのです。大丈夫。信じてもらっていいです。」この言葉を聞いたとき、周囲に憚ることなく診察室で泣いてしまいました。医師の言葉がうれしくて泣いたのか、宣告されたショックで泣いたのかはっきりとした理由は忘れましたが、平静を取り戻すまで医師はずっと無言で待ってくれていました。この時の医師のやさしい口調と笑顔は私にとって宝物であり、10年近くたった今でもはっきりと覚えています。

数日後、私は人生初の入院を経験し最終的には、瀰漫性大細胞型悪性リンパ腫と診断され、化学療法による治療を行いました。治療中は数週間食事もできず水も飲めず、ただひたすらベッドに寝ていました。普段の1分が10分、1時間が10時間くらいに感じていましたが「大丈夫、助かる。」と医師の言葉を信じ、毎日薬からくる吐き気と戦っていました。

今ではすっかりよくなりましたが、人間ドックを受けていなければ宣告どおり今はもうこの世にはいないと思うと、正直ぞっとします。人間ドック自体は治療ではありませんが、人間ドックを受けることで早期発見による徹底治療が可能になります。医学的なことは詳しくわかりませんが、人間ドックのおかげで私は今生きているとも思っています。私のように症状が初期段階には感じないことも多いそうですが、実際に放っておくと死につながる病気を発見できたわけですし、この経験はぜひお伝えさせていただきたいです。実際は人間ドックを受けても「問題なし(健康)」となるケースがほとんどと思いますが、これは本当に健康であることの証しにもなりえますので、私は毎年定期的にこの証しを獲得するために人間ドックを受けています。

「自分のことは自分が一番よくわかっている」ではなく「自分の健康のことは人間ドックが一番よくわかってくれる」ということを最後にお伝えして私の体験談を終わらせていただきます。