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第10回 健保連賞

健保連賞 『通信簿』

  滝本 恵さん(愛知県)

毎年人間ドックを受診して早10年。

私にとって人間ドックは、年に一度の大事な試験のようなもの。結果は通信簿。

気が弱い私は毎年友人と一緒に受診している。特にバリウム検査はとてもひとりでは乗り切れそうにない。名前を呼ばれると、まるでこれから戦いに行くかの如くお互い励ましあいながら検査室に入る。情けないと思いながらも10年間まったく変わらない心境だ。

受診する数日前からとても緊張する。今さら何をあがいても結果は変わるはずもないのに、軽い運動をしてみたり、こってりした食事は避けてみたり。それはまるで、子供がテストの前だけ必死になって勉強するのと同じような行動で、内心苦笑いしている。

私がここまで緊張するのには理由がある。

人間ドックで両親と姉に初期の病が見つかったのだ。姉は40歳の誕生日に受診した人間ドックで乳がんが、父は大腸がん、母は血液系の病。幸いにもすべて初期で見つけていただき、現在は私以上に毎日元気に過ごしている。両親はいわゆる健康オタクで、健康には人一倍気を使っていた。それでも病気になる、ということに当時はとてもショックを受けた。どんなに気を付けていても、病は忍び寄ってくるものなのだと改めて痛感した。

だから毎年の人間ドックがまるで年に一度の試験のように感じるのだ。

年を重ねるごとに諸々の数値が基準値を超えはじめ、目を覆いたくなるような結果が増えてきた。コレステロールと血圧は赤点。婦人科系も再検査となった。幸い大きな病気は見つかっておらず経過観察で済んではいる。

家庭を守る主婦として食事には十分気を付けてはいた。この結果はきっとストレスと加齢のせいだ。あとは運動不足。分かってはいるものの自分ではなかなか改善できない。子供のためにと食事もこってりしたボリュームのあるものが多かった。赤点を下され、あれこれ振り返ってみれば思い当たることが多々あることに気付く。年齢を重ねているにもかかわらず、食事の量と質は変わらずにいたことを反省する。

人間ドックの結果を持って婦人科を受診した。出産以来の婦人科受診。検査をし、病名を聞きいくつかの治療方を伺った。コレステロールと血圧については更年期によく見られるとの話だが、食事に気を付けて経過観察ということとなった。

人間ドックを受ける意味はここにあると思う。結果を放置せずにちゃんと医療機関を受診する、そのための試験と通信簿なのだ。人間ドックを受けました、ただそれだけで満足をし、結果をないがしろにしている人がなんと多いことか。

今は世界中の人々が、猛威をふるうウイルスのせいで息苦しい閉塞感のもとでの生活を強いられている。このストレスが私たちの身体にどのような影響を与えるかは計り知れない。気軽に外出できない、仲の良い友人と楽しくおしゃべりもできない。これでは心身の平穏はもちろん、健康にも悪影響を及ぼしかねない。この状況は未だ出口を見せず、ストレスでもう限界、と感じる日々が続いている。今まで以上に食生活に気を配り、規則正しい生活を心がけるようにはなった。憎きストレスを発散するために、ひとりでできる読書や塗り絵に興じたりしている。

でもやはり運動不足のせいで身体がうずうずする。心がモヤモヤする。もしやこれはチャンスかもしれない?!そう思っていたタイミングで、いつも行く近所のスーパーの2階でスポーツウエアの半額セールが行われていた。やっぱりこれはそういうことかな?!健康数値改善のためにいつか挑戦したいと思っていたランニングを始めるのは、きっと今だ!そう思い立ってウエアを二組購入。無理はせず週に3~4日、毎回3キロほどを自分のペースで楽しく走っている。走り終わったあとは心地良い疲労感と充実感を感じ、ストレスが軽減されていることを実感する。この状況下でも驚くほど何事にも意欲的になった気がする。

私も含め世間のお母さんは自分のことを労わっていないことが多い。夫や子供、年老いた両親のことは、少しの変化が見えるだけであれこれ心配するのに、自分のことについては少し体調がおかしくても、別に大丈夫だろうと根拠のない自信がなぜかあるのだ。お母さんこそ人間ドックを受診し自分の身体の中について事細かにしっかり調べるべきだと強く思う。

ウイルスとの共存のこの状況下で、周りの人を気遣うと同時に自分のことも大切にしなければいけないということに気付けた。元気な人がいっぱいいる世界こそが平和といえるのではないだろうか。

自分の健康が一番大事。

みんながそう思って自分を大切にすることこそがとても大事なことだと思う。

さて、この私の気付きや変化が、次回の人間ドックでどのような結果をもたらすのか。次の通信簿がとても楽しみである。