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上部消化管X線検査でわかること

(50音順)

圧排像
(あっぱいぞう)
胃の周囲の臓器や腹腔内の腫瘤によって、袋状の胃が外側から押されて内腔側に窪んだ所見です。胃壁まで病変が及んでいなければ、輪郭は平滑です。呼吸や胃の伸展度により部位や形状が変化します。
アカラシア 食道から胃にかけての筋肉機能障害により、摂取した食物をうまく胃に運べない病態です。内視鏡などの精密検査が必要です。
胃潰瘍
(いかいよう)
胃粘膜の欠損(陥凹)した良性の病変です。出血する場合がありますので内視鏡などの精密検査が必要です。
胃潰瘍疑い 胃粘膜の欠損(陥凹)した病変が疑われます。出血する場合がありますので内視鏡などの精密検査が必要です。
胃潰瘍瘢痕 (いかいようはんこん)
胃潰瘍が治り、胃粘膜が修復された状態です。年1回の経過観察で良いです。
胃癌
(いがん)
胃粘膜に発生した悪性腫瘍です。診断は組織の一部を採取して行う病理検査(生検)で確定します。検診を毎年受診することで発見される胃癌の80%以上は早期癌でほぼ100%の生存率です。また最近では早期癌の大半が内視鏡手術で治癒しています。さらにピロリ菌感染者の場合、胃がんの治療とともにピロリ菌除菌を行うことで胃がんの再発率も減少することが分かっています。
胃癌疑い 胃癌が疑われる所見です。内視鏡での組織検査(生検)で確定します。X線検査では、僅かでも胃がんの疑いがあれば、積極的に「胃癌疑い」として内視鏡での精検を勧めています。
胃陥凹性病変(胃潰瘍を除く) (いかんおうせいびょうへん)
胃粘膜の欠損(陥凹)した病変で、良性または悪性の胃粘膜下腫瘍や胃癌が含まれます。内視鏡などの精密検査が必要です。
胃陥凹性病変疑い(胃潰瘍を除く)
(いかんおうせいびょうへんうたがい)
胃粘膜の欠損(陥凹)した病変で、胃粘膜下腫瘍や胃癌などが疑われます。内視鏡などの精密検査が必要です。
胃憩室 (いけいしつ)
胃壁の一部が外方へ袋状に突出したものです。多くの場合、放置してかまいません。
胃その他 上記以外の病変で、消化管間質腫瘍や消化管外腫瘍などがあります。
胃底腺ポリープ (いていせんポリープ)
胃の上中部にできる1cm以下の小さな半球状の隆起(ポリープ)です。複数あることが多く、良性です。多くの場合、放置してかまいません。
胃粘膜下腫瘍 (いねんまくかしゅよう)
胃粘膜の下の層から発生したこぶ状または陥凹した腫瘍性病変です。良性と悪性のものがありますので、一部のものを除いて内視鏡などの精密検査が必要です。良性と確認できたものも形や大きさの変化の有無の経過観察を行います。
胃びらん(表層性胃炎は除く)
 
胃のびらんは、潰瘍よりも軽度の被覆上皮欠損と定義されるものです。つまり、一番表面の組織である「粘膜組織」が欠損している状態を指します。胃酸過多による炎症やストレス、飲酒などで起こることがあります。
胃ポリープ(胃底腺ポリープ以外のポリープ) 胃粘膜の内腔に突出(隆起)した病変で、胃底腺ポリープ以外に過形成、腺腫などの種類があり、初めて指摘された場合は内視鏡などの精密検査が必要です。
胃隆起性病変(ポリープを除く) (いりゅうきせいびょうへん)
胃粘膜の内腔に突出(隆起)した病変で、胃癌や悪性の粘膜下腫瘍も含まれます。内視鏡などの精密検査が必要です。
胃隆起性病変疑い(ポリープを除く) (いりゅうきせいびょうへんうたがい)
胃粘膜の内腔に突出(隆起)した病変で、胃癌や悪性の胃粘膜下腫瘍も疑われます。内視鏡などの精密検査が必要です。
陰影欠損 (辺縁が断裂している場合、充盈像でなくても表現可) (いんえいけっそん)
主として充盈像(胃をバリウムで充盈して撮影した画像)で、内腔を満たしたバリウムの一部が欠損した像です。辺縁に見られることがほとんどですが、臥位では胃の中央部に見られることもあります。まず、進行した癌や後述する胃粘膜下腫瘍が疑われますが、大きな良性ポリープで見られることもあります。
陰影斑 (いんえいはん)
二重造影像や圧迫像で、ごく淡いバリウムの溜まりを指します。ニッシェよりも淡い(陥凹の深さとしては浅い)もので、良性のびらんや早期癌でみられます。しかし、胃の粘膜は常に平坦になっているわけでなく、バリウムがたまたま溜まっていることもあり、判定するのが難しい所見です。
急性胃(粘膜)病変 (きゅうせいいねんまくびょうへん)
急性胃炎の重症型です。心窩部(みぞおち)の強い痛み、吐き気、膨満感などで急に発症し、胃の粘膜に広範にびらんや潰瘍をみとめるものです。
結石 体内に生じた石状の塊のことであり、胆のう結石や腎臓結石が代表です。X線検査ではカルシウム含有量が多くなるほど白く濃い陰影として写ります。部位や形、大きさに応じて放置していいものから精密検査が必要なものまであります。
十二指腸潰瘍 (じゅうにしちょうかいよう)
十二指腸潰瘍は、ピロリ菌や非ステロイド性抗炎症薬、胃酸などによって、十二指腸の粘膜が傷つけられ、粘膜や組織の一部がなくなる病気です。主に十二指腸の入り口である球部に出来やすい特徴があります。
十二指腸潰瘍瘢痕 (じゅうにしちょうかいようはんこん)
十二指腸潰瘍が治り粘膜が修復されたときにできた変化です。
十二指腸憩室 (じゅうにしちょうけいしつ)
十二指腸壁の一部が外側に向かって袋状に拡張した状態です。特に問題ありません。
十二指腸その他 (じゅうにしちょうそのた)
上記以外の病変で、十二指腸ポリープやブルンネル腺腫、乳頭部腫瘍などがあります。
腫瘤陰影 (しゅりゅういんえい)
粘膜面を撮影した二重造影法で周囲の健常粘膜と明らかに異なり、こぶ状の隆起があることを示す所見です。隆起の性状や周囲の所見、大きさ等から、隆起の性質(悪性か良性か、粘膜の病変か粘膜下の病変かなど)が推定できます。
消化管外腫瘤様陰影 (しょうかかんがいしゅりゅうよういんえい)
消化管から明らかに離れた位置にあり、こぶのような形をした陰影を指します。消化管以外の臓器や腹腔内に発生した腫瘍などが疑われます。
消化管術後 がんや潰瘍などに対する消化管の手術後の形態変化を指します。
消化管内異物様陰影(食物残渣も含む) (しょうかかんないいぶつよういんえい)
空腹時には食道、胃、十二指腸の管腔内に存在しない、体外から入った異物の陰影を指し、白いバリウムの中に様々な形の黒い影として描出されます。その正体として食物残渣、アニサキスなどの寄生虫、誤嚥物などが挙げられます。
食道炎 食道粘膜の炎症です。胃液の逆流、カンジダなどの感染や過度の飲酒などで起きます。胸やけや胸痛などの症状があれば治療が必要です。
食道潰瘍 (しょくどうかいよう)
食道粘膜に起こる限局性の組織欠損をいいます。状況確認のための内視鏡などの精密検査とともに治療が必要です。
食道潰瘍疑い (しょくどうかいよううたがい)
潰瘍が疑われる所見があります。内視鏡などの精密検査が必要です。
食道がん
 
食道にできる癌などの悪性腫瘍の総称です。診断は組織の一部を採取して行う病理検査(生検)で確定します。早期発見・早期手術で救命できます。さらに極早期だと内視鏡手術も可能です。
食道がん疑い (しょくどうがんうたがい)
食道のがんが疑われる所見です。内視鏡などの精密検査での確認が必要です。
食道陥凹性病変 (しょくどうかんおうせいびょうへん)
食道内腔に対して陥凹した(へっ込んだ状態)病変の総称です。食道癌、潰瘍、憩室などによる変化であり、内視鏡検査などによる精密検査が必要です。
食道陥凹性病変疑い (しょくどうかんおうせいびょうへんうたがい)
食道陥凹性病変(上記参照)の疑いがありますので、内視鏡などによる精密検査が必要です。
食道憩室 (しょくどうけいしつ)
食道を構成する筋肉の層が弱いために食道の粘膜が食道の外側に突出した状態です。ほとんどは無症状であり、心配する必要はありません。
食道腫瘍
(ポリープ含む)
(しょくどうしゅよう)
食道にできた粘膜面が盛り上がった腫瘤などの病変です。粘膜面から発生するものと粘膜の下から発生するものがあります。盛り上がりの性質を調べるために内視鏡検査などが必要ですが、前回と同様の指摘の場合は経過を観察します。
食道腫瘍疑い (しょくどうしゅよううたがい)
腫瘍が疑われる所見があります。内視鏡などで盛り上がりの性質を調べる必要があります
食道静脈瘤 (しょくどうじょうみゃくりゅう)
食道の静脈が瘤(こぶ)状に腫れた状態です。主として肝硬変や肝がんに伴い門脈の血流障害により生じます。破裂して大出血をきたすこともあり、内視鏡などの精密検査が必要です。
食道ポリープ
 
食道上皮から発生した基本的に良性のできものです。腫瘍性のものと炎症性のものがあり、いずれもまれにですが癌化することもあります。初回指摘の場合や増大傾向のある場合は内視鏡などの精密検査が必要です。
食道隆起性病変 (しょくどうりゅうきせいびょうへん)
食道の内腔に突出した病変の総称です。食道癌やポリープ、粘膜下腫瘍などによる変化であり、内視鏡検査などによる精密検査が必要です。
食道隆起性病変疑い (しょくどうりゅうきせいびょうへんうたがい)
食道隆起性病変(上記参照)の疑いがありますので、内視鏡などによる精密検査が必要です。
食道裂孔ヘルニア (しょくどうれっこうヘルニア)
食道が横隔膜を通り抜ける間隙である食道裂孔から、本来腹腔内にあるべき胃が胸腔内に入り込む状態を言います。胃酸などの胃内容物が食道へ逆流し、逆流性食道炎を起しやすい状態です。症状があれば治療の対象になりますが、内服治療が効かない場合は手術療法を考慮する場合があります。
石灰化像 カルシウムが体内に沈着したもので、X線検査では濃い白色陰影として写ります。粒状、塊状、帯状など大きさや形は様々です。多くの場合、特に対処の必要はありませんが、経過観察や精密検査が必要になることもあります。
胆石 胆汁内のカルシウムやコレステロールなどの成分によって形成された石です。胆のう内だけでなく、胆管にできることもあります。始めての指摘の場合は超音波検査等が必要になることもありますが、多くの場合は大きさや形状に変化がなく症状も無ければ経過をみるだけで十分です。但し、症状がある場合は手術も含め処置が必要になることもあります。
透亮像
(いわゆる”抜け像“のみでなく、付着すべき造影剤が弾かれている場合も含む)
(とうりょうぞう)
二重造影像で周囲に比べてわずかに造影剤(バリウム)がはじかれた所見です。丈の低い隆起を表しており、良性ポリープなどで多くみられます。胃癌(とくに早期癌)などでもみられることがあります。また、気泡や残渣などもよく似た所見を呈するので気を付けなければなりません。
内臓逆位 (ないぞうぎゃくい)
内臓の配置が多くの人と左右逆になっています。先天的なものですが、病気ではなく、また異常でもありません。
 ニッシェ 潰瘍によって生じた胃壁の欠損(窪み)にバリウムがたまった所見です。側面像では消化管の辺縁から外側に突出してみえます。二重造影像や圧迫像でみられる正面像ではバリウムのたまりとして認められます。ニッシェの輪郭や辺縁の性状から良性潰瘍か悪性腫瘍に伴う潰瘍かを判別します。
粘膜不整(造影剤付着不良、顆粒状、結節状、アレアの乱れ、等を含む) (ねんまくふせい)
正常胃粘膜はX線検査では均一で微細な模様を呈していますが、その構造が乱れた状態を言います。慢性胃炎や比較的凹凸に乏しい胃がんなどが原因となります。
ひだ集中  潰瘍が治癒する過程で粘膜が引きつれて、粘膜ひだが一点あるいは線(ときには局面)に向かって集まった所見です。集中するひだの様相を見ることによって良性潰瘍によるものか悪性腫瘍によるものか推定できます。
ひだ集中様 ひだが集まっているようにみえるものの、ひだ集中とは断定できない所見です。胃の前壁と後壁のひだが重なって、集中しているように見えることもあります。
ひだ粗大
 
胃粘膜には胃の長軸に沿ってひだがみられますが、ひだが太くなった状態を言います。慢性胃炎、胃がん、リンパ腫などが原因となります。
ひだの中断
 
ひだが不自然に途切れた状態を言います。胃炎、潰瘍、がんなどが原因となります。
ひだの乱れ
(11、12、13、以外のもの)
ひだは通常表面・辺縁が平滑で、直線状またはゆるやかにカーブを描くように走行していますが、通常の形状や走行ではない状態を言います。慢性胃炎や腫瘍性病変が原因となります。
辺縁の不整 (二重輪郭、壁硬化、壁不整など、滑かな辺縁曲線の連続性が失われた所見全て含む) (へんえんのふせい)
正常では胃の辺縁は滑らかな直線あるいは曲線ですが、病変があると、細かなギザギザや、複線化といって多重線や線が錯綜したようになります。これらをまとめて辺縁の不整と表現します。早期癌を発見する手掛かりになりますが、良性の潰瘍瘢痕などでもみられます。病変の輪郭が不整な時にも使うことがあります。
変形
(弯入を除く:小弯短縮、伸展不良、狭窄、拡張も含む)
 
正常の胃は、バリウムやガスで伸展させると、鉤型(Jの字型)を呈しています。病変(とくに潰瘍や腫瘍)があるときにはいろいろな変形をきたします。例えば胃の上方の辺縁線(小弯)が短くなることを小弯短縮と呼びますが、小弯にまたがる線状潰瘍などが原因です。特徴的な変形についてはその原因がほぼ特定できます。
慢性胃炎(萎縮性、過形成、肥厚性など) 胃粘膜に炎症が慢性的に続くことを慢性胃炎と言います。慢性胃炎には胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎や、粘膜が凹凸になる過形成性胃炎、粘膜が厚くなる肥厚性胃炎などがあります。
弯入
(わんにゅう)
胃が適度に伸展したときに、辺縁にくびれが生じることがあります。原因は、胃壁の筋層の局所的な収縮です。生理的な胃の収縮運動では左右対称性のことがほとんどです。慢性の潰瘍や治癒した潰瘍、癌(特に進行癌)では、弯入によって病変の存在に気付くことがあります。急性のびらんや潰瘍でもみられることがあります。